スマホでサンマが焼ける日ーコラムー第18回 いかに無駄を省いてより効率的になるか、盆栽的引き算の発想
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2021年08月04日
一般社団法人エネルギー情報センター

これからは、より少ない資源からより多くのエネルギーを作り出していく時代になります。エネルギーの無駄をなくし最適化していくことが肝で、「引き算的発想」が重要になってきます。
執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二
富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。
記事出典:書籍『スマホでサンマが焼ける日 電気とエネルギーをシェアする未来の「新発想論」』(2017年)
エネルギー消費が〝悪いこと〟だった時代の終焉
電気やエネルギーの消費が拡大する、後押しするだろう要因として、もう一つ重要な要素があります。それは私たち人間の「エネルギー消費に対する心理」です。世界的にも活躍している経営コンサルタントの大前研一氏は常々著書の中で、日本経済が上向きにならないのは、お金を貯めておかないと不安だ、という人々の心理が大きく影響している。個人や企業からもっと市場にお金を出させるには、もっとお金を使いたいという人の心理に訴えるべきだということをおっしゃっています。
電力・エネルギー消費についてもまったく同じようなことが言えます。つまり、これまでは電力・エネルギーを使うこと、使いすぎることはすなわち浪費=地球や環境にとってよくないことであり、また我々の生活にとっても無駄なことだという心理が働いていたと思うのです。特に最近は世の中全体的にエコ志向の高まり、地球温暖化への危機感、地球規模の環境保全への意識の高まりとともに、電気やエネルギーの消費、石油やガソリンなどの資源消費はできるだけ控えるべき、と考える人が増えています。
エネルギーはあまり使ってはいけないもの、という罪悪感、後ろめたさ、エネルギーの消費に対して抵抗のある人が多いのではないでしょうか。特に電気は発電のプロセスや方法において、地球環境や人間にとってよくないことをしているというネガティブイメージを持っている人が多いと思います。中には極端な節電生活をしている人もいます。
しかしこれからは、電気エネルギーはエネルギーハーベスティングをはじめとした発電・送電システムの変化や改革によって、今まで無駄にしていたものをうまく利用して発電していく時代に入ります。また、石油など化石燃料といった資源も使わずに発電できるシステムが構築されていきます。
となると、電気は使ってはいけないものから、使っていいものになる。消費することに罪悪感を持つ必要がなくなるはずです。電気エネルギーは、使いたくないものから「使いたいもの」へ変わっていくということです。
今までの社会は電気エネルギーを作る上でも使う上でも、あまりにも多くの無駄を生じさせてきました。これからは作る量が増えるというよりは、今まで無駄になっていたものが全部無駄なく使える社会になるので、エネルギー消費が無駄な消費=浪費であるという意識は改革されていくでしょう。そのように人々の意識が変わっていけば、いわゆる20世紀的な資本主義=「大量に生産し大量に消費する利益至上主義的な経済システム」から、もっと社会全体の有益性を重視した「公益的な資本主義」に徐々に移っていくような気がしています。
これからは、より少ない資源からより多くのエネルギーを作り出していく時代になります。また、20世紀のように電力・エネルギーを作り出すために、石油などの化石燃料、天然ガスなどの資源に依存することも必要なくなっていくでしょう。
そう考えると、単に私たちの生活や身近な経済が変わっていくだけに留まらず、国家レベル、世界レベルで大きな変化が起こるでしょう。つまり、これからは20世紀のように資源大国であれば経済的に潤う時代ではなくなり、逆に、技術を持っている国が注目される時代、「技術大国がエネルギー大国になる」時代になります。
今までは、ロシアやアメリカ、中東諸国など資源をたくさん持っている国が有利で、エネルギー大国としての地位を維持してきました。しかし、これからは資源が多い、少ないということよりも、「少ない資源をどう効率的に使えるか」という技術がもっと重要なポイントになってくるはずです。
今、中東諸国などオイルマネーで潤っている国がたくさんありますが、近い将来、資源の輸出に多くを依存している資源立国が経済的に下り坂に入っていく可能性は十分あります。そして、日本のようなエネルギーシステム先進国で、再生可能エネルギーなどがもっと実用化されて石油などの化石燃料を輸入しなくても充分な生産力を維持していくことができるようになれば、国家間のパワーバランスは変わってくるでしょう。これまで、戦争や紛争の火種としての「領土問題」には、資源問題が大きく関係していました。今後は、そうした資源の奪い合いによる紛争はなくなっていくでしょう。
無駄なものを剪定していく盆栽的「引き算の発想」
現在の電力・エネルギーシステムには多くの無駄が存在しているとはいえ、実は世界的に見ると日本は世界の中でも比較的「エネルギー効率の高い国」なのです。エネルギー効率が良い、高いというのは、要は無駄なく電気を作り無駄なく使っている、リサイクルも含めて無駄を生まない、ということです。
日本は昔から石油などの資源に乏しい上に、南北に長く、地域や季節によって寒暖の差も激しく気候の変化も多いという独特の環境のため、限られた資源を使っていかに快適な生活が送れるか、ということを懸命に考え、冷暖房技術やエネルギーを効率的に利用する技術を磨いてきました。無駄のない発電・送電システム、家電の技術開発に取り組み、人々の意識も、いかに節電や省エネをして無駄を減らすかということに対して高い意識を持っているのです。
日本人はもともと、ものを大切にするいわゆる「もったいない精神」という価値観、感覚を持ち合わせています。ですから肉や魚、野菜などの食材もできるだけ無駄にしないで、すべて料理に使い切ります。エネルギーに対しても同じ考えだと思います。今後、こうした日本の進んだエネルギーシステム全体を途上国などに輸出する時代が来るのではないでしょうか。日本が持っている世界トップレベルの技術をさらに磨いていけば、この総合的なエネルギーシステム自体を世界に売っていけるはずです。
これからの時代は、エネルギーの無駄をなくしていく、最適化していくことが肝だという話をしてきましたが、ここで重要になってくる発想が「引き算的発想」です。20世紀は、どんどんモノを作る、足りないものを補充、補填していく、という「足し算的発想」の時代でした。しかしこれからは「引き算的発想」が重要になっていくと思います。
引き算的発想とは、簡単に言えば無駄なものを省いていく、カットしていくということなのですが、ただ単に無駄を省けばいいというものではありません。ある無駄をカットすることによって、本来潤っていたものが枯渇したり、豊かであったものが貧しくなってしまってはカットの意味がないからです。無駄を省いたことによって、より効率的になると同時に豊かでよいものにならなければならないのです。
たとえば「盆栽」がよい例です。盆栽を育てる上で重要なのは「剪定(せんてい)」ですが、盆栽の剪定は、ただ闇雲に枝葉を間引けばよいわけではありません。どの部分のどの枝をどの位置でどのように切れば、他の枝の成長にとってよい、という発想で剪定を行うのです。
これからの電力・エネルギーにおける無駄の排除も、盆栽と同じような発想、すなわち、エネルギーというエコシステム(生態系)の中で、どこのどんな無駄を省けばより効率的なエネルギー循環を生み出すか、という「盆栽的引き算」の発想が重要なのです。「エネルギーをたくさん使う時代になるのだから、もっとたくさん電気を作らないと」ということではなく、今まで捨てて無駄にしていたものを上手にカットし、エネルギー利用を効率化、最適化していくという発想に転換しましょうということです。
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