スマホでサンマが焼ける日ーコラムー第6回 「集中から分散」「大きいから小さい」時代へ
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2020年10月08日
一般社団法人エネルギー情報センター

ブロックチェーンやウェアラブル端末など、世の中は「集中から分散」へのシフトと同時に、「大きいから小さい」へシフトしつつあり、電力・エネルギー分野も集中から分散へのシフトが加速していくと思われます。
執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二
富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。
記事出典:書籍『スマホでサンマが焼ける日 電気とエネルギーをシェアする未来の「新発想論」』(2017年)
世界は「集中から分散」へ向かう
前回までのコラムでは、世界がアナログからデジタルへ、電気がアナログからデジタルへ移行しつつあるという話をしました。もう一つ、これからの世界的トレンドを表すキーワードが「集中から分散」です。電力・エネルギー分野も集中から分散へのシフトが加速していくと思われます。電力・エネルギーの話をする前に、まず「世の中のいろいろな物事が集中から分散へと移行しつつある」とはどういうことかを、分かりやすい例を挙げて説明しておきましょう。
私は今、世界は集中の時代から分散の時代へと移行しつつあると感じています。たとえば「メディアと情報発信」。かつてニュースやその他様々な世の中の情報は、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなどいわゆるマスメディアが集め、各メディアから世の中の人に一斉に大量発信していました。こうした仕組み(システム)は、情報発信機能、メディア機能が一部の企業(媒体)に「集中」していた状態と言えます。
ところが今や、インターネットと通信機能の進化発展により、既存の大手メディアだけでなく誰もが情報発信者(メディア)として、世界中に情報を発信できる時代になりました。しかも情報を受け取る側(視聴者)も、大きく変化しました。これまではマスメディアが作った番組の中から「選択」して視聴するだけであったのが、「見たいもの」を「探す(検索する)」ことができるようになりました。
ネット上には様々なニュースメディアが乱立し、果てはSNSやYouTubeなどで個人が簡単に世界中に情報発信できる時代になっています。また、自分で面白い動画をYouTubeにアップするYouTuberと呼ばれる人々も増えてきて、その人たちにもきちんとお金が入るような仕組みができています。かつてテレビ局や映像制作会社が担っていた機能を、今ではYouTubeや動画サイトが担うようになってきているのです。
20世紀までは国家規模で行っていた大プロジェクトや研究開発なども、テクノロジーの発達でベンチャー企業や個人レベルでも可能な時代になっています。国家や巨大企業に集中していた産業やビジネスが、次第に分散化しているのです。
たとえば宇宙開発。昔ならロシアのような大国やNASAでしかできなかったようなロケットや人工衛星の開発・打ち上げなどにも、いま多くの民間企業が「宇宙ビジネス」として参入しています。2010年、アメリカのウィル・マーシャルという人が立ち上げた宇宙関連事業会社Planet Labsは、10×10×30センチという超小型人工衛星を低予算で大量生産していて、NASA顔負けの地球全体の高解像度な衛星画像を毎日更新できるシステムを提供しています。
インターネットを通じて社外の人、世界中の人に仕事を依頼できる「クラウドソーシング」サービスの普及によって労働力も集中から分散へ向かっています。またブロックチェーン(仮想通貨の中核技術となる次世代の分散型ネットワーク)も集中から分散へのよい例です。世界は集中から分散へ向かっているのです。
大きいものより「小さいもの」が強くなる時代
かつて、製菓メーカー森永が発売したチョコレートのCMで使われた「大きいことはいいことだ」というキャッチコピーが流行ったことがあります。前回の東京オリンピックが開催された直後の昭和40年代初頭のことです。
2020年、東京で2度目のオリンピック・パラリンピックが開催予定でしたが、前回の東京オリンピックが開催された昭和39(1964)年当時の日本は、まさに高度経済成長時代。そんな時代を象徴するようなコピーでした。昭和30年代までの日本では、小さな幸せ、慎ましやかな幸せが美徳とされてきました。しかし経済大国の道を歩みつつあるこれからは、「もっと胸を張って、大きいことはいいことだと主張しよう」というコンセプトが、このコピーには込められていたのです。
当時は確かに大きいことがよかった時代なのでしょう。しかし時代は変わり、今、時代は「大きい」ことより「小さい」ことが価値を持つようになってきています。たとえば車。アメリカの50年代や60年代、日本の70年代あたりは大型車が流行しましたが、今やコンパクトカーが人気です。
また、ステレオなどの音響機器も、昔は大型スピーカー全盛の時期がありましたが、今やコンパクトオーディオの時代を過ぎ、音楽を聴く人の多くはiPhoneをはじめモバイル端末型の機器が主流になっています。携帯電話もコンピュータもすべて小型化。コンピュータなどはウェアラブル端末(身につけて持ち歩くことができるコンピュータ)の進化によってますますコンパクト化しつつありあます。
そう考えると、世の中は「集中から分散」へのシフトと同時に、「大きいから小さい」へシフトしつつあると思います。大きいことがいいこと、大きいことがパワーを持つ時代は終わり、様々なものをダウンサイジングすること、すなわち、もののサイズを小さくしてコスト削減して効率化することが重要な時代になってきたのです。
国家においても大国優位の時代から、バルト三国のように小さくて質の高い国家(クオリティ国家)や、ブータンのように国土や経済規模は小さくても、限られた資源を効率的に有効活用するなど環境・エネルギー問題に取り組み、世界一の幸福度(GNH)を実現している国の価値が注目されるようになりました。これからはさらに多くのものが〝大きいから小さい〟へと向かい、小さなものの効率性、価値が見直されていくでしょう。
電力も「集中から分散」「大きいから小さい」時代へ移行しようとしています。これまでは、火力発電所も水力発電所も、だいたい20年~30年くらいかけて、山奥や海の近くなど限定された場所に巨大な発電施設を作ってきました。そこで10電力会社(北海道電力、東北電力、東京電力、中部電力、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力)が常に何百万人分の電力を作って提供してきたのです。それがここにきて、太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーを中心とした小型、中型の発電所が全国各地に広がっています。それが「分散型発電」です。
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執筆者情報

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