スマホでサンマが焼ける日ーコラムー第16回 情報はクローズドよりオープンにするほうが得する時代
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2021年06月07日
一般社団法人エネルギー情報センター

かつて情報はクローズドにしておくほうが良いという考え方が主流でした。ですが今のインターネット社会では、エネルギー情報をオープンにすることが資産となります。オープン思考のほうが得をする時代なのかもしれないです。
執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二
富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。
記事出典:書籍『スマホでサンマが焼ける日 電気とエネルギーをシェアする未来の「新発想論」』(2017年)
「エネルギー×情報」であなたの情報資産が売れる!
今、あなたはどうやってお金を稼いでいますか?中には株やその他の投資、不動産などで、いわゆる不労所得を得ている人もいるでしょうが、ほとんどの方は何かしらの労働によってお金を得ていると思います。つまり、みなさんは自分の「労働力」(スキルや才能、または時間)を売って、その引き換えにお金をもらっているわけです。
でも、「労働力以外のものを売ってお金にできたらいいな、しかも手間隙もかけずに、苦労しないで」と思ったことはありませんか?そんな方法があるなら今すぐ教えてほしい、と言う声が聞こえそうですが、これからはそれが可能な時代になります。
インターネットが出てくる前は、お金を稼ぐ方法は、個人であれば「労働力を売る」、会社や商店であれば「モノを売るか、サービスを売る」ことしかありませんでした。しかしインターネットによって、個人でもブログやメルマガなどで課金したり広告をつけたりして「情報を売る」ことができるようになりました。そして今、私たちは今まで売ることのできなかった新しいモノを売ってお金にできるようになりました。それは電気というエネルギーであり、電気利用情報です。
個人が電気自体を売ることは、すでに太陽光発電などによって実現していますが、これからはもっと個人発電が進んだり、個人で電気を貯めておいたり簡単に人に送ったりできるようになるので、誰もが気軽に電気をつくり、売れる時代がくるでしょう。
今後さらに重要な点は、2つ目の「電気利用情報、エネルギー情報」をお金にすることができるということです。これまで述べてきたように、これからは個人の電気利用データに新しい価値が生まれる時代です。したがって、「あなたの電気利用情報を買います」という企業や、ここまでの細かいデータを開示してくれたら家電を安く売ります、といったサービスも出てくるでしょう。また、自治体が地域でのエネルギー利用状況を集めておいて、それを使いたいIT企業や電力会社に売ることによって対価を得られたり、電気をタダで供給してもらえるといったこともあるでしょう。
これまでの、電気自体がお金がかかるもの、消費するだけのものから、使ったデータを第三者に渡すことによって報酬が得られる、つまり「買うものから、売るもの」になる可能性を秘めています。それだけで生計が立てられるわけではないと思いますが、細かい電気利用情報をオープンにすることで、月に払っている電気代がタダになるくらいの収入は得られるようになるのではないでしょうか。
実は「プラモデルの乾燥」に使われていた食器乾燥機
家電の利用状況が細かく分かる、ということに関して、少し面白い話があります。以前、あるメーカーの食器乾燥機がすごく売れた時期があったそうです。メーカー側は「なぜうちの食器乾燥機が急に売れ始めたんだろう?」と疑問に思っていたらしいのですが、アマゾンのカスタマーレビューを見たら、なんとそのとき食器乾燥機を買っていた人たちは主婦ではなくて、ほとんどが男性だったのです。
なぜ男性が食器乾燥機を?と思い、よくよくレビューの内容を見てみると、彼らは食器を乾燥させているのではなく、自分たちで作ったプラモデルやフィギュアの塗装を乾燥させるために使っていたのです。そして「これを使えばフィギュアの乾燥があっと言う間だよ!」と、一部の人たちの間の口コミで一気に広まったというわけです。
メーカーは、昔はアンケートやモニター、グループインタビューなどによって、自分たちの製品がどのように使われているのか?ユーザーの声、ニーズを拾い上げていました。その後、インターネットやアマゾンなどのECサイトができて、メーカーは自分たちの製品がどう使われているか、どう評価されているかを以前より手軽に素早く、細かく把握できるようになりました。
これからは、前回のコラムのように「炊飯器でおかゆばかり炊いている」ことが分かる、というようにIoT技術の進歩で家電ごとの利用状況をさらに細かくもっとリアルに把握できるようになります。そうなるとメーカー側はどんな人がどんなふうに使ってくれているのかというデータを集積して、「だったらこういうユーザー向けにこういう機能を追加しよう」「こういう改良を加えてこんな新製品を作れば売れるんじゃないか?」と製品開発に役立てることができます。また、この食器乾燥機のエピソードのように、思いもよらなかった新たなニーズやマーケットを発見、開拓できるはずです。また消費者としてはこうした家電の利用状況データを積極的にメーカー側に提供し、それによって報酬を得られる時代が来るでしょう。
情報はクローズドよりオープンにするほうが得する時代
これからは個人的な電気使用状況をオープンにすることによって様々なメリットを享受できる時代になっていきます。しかし、現在ネットの世界での個人情報について様々な問題が指摘されているように、今後、電気利用データの提供、開示についても問題にされていくでしょう。電気利用データは個人の生活スタイルや生活パターン、ライフログがすべて分かってしまうので、ある意味重要な個人情報です。
したがって、今、ブログやSNSで自分の生活や考え、場合によっては個人情報的なものを好んでオープンにして、それによって得られるメリットに価値を感じている人と、「SNSなんてやらない。プライベートなことはできるだけオープンにしたくない」という人がいるように、「自分の電気利用情報はオープンにしたくない」という人も出てくるはずです。
どちらの考えかたも、それは個々の価値観なのでどちらが正しいということはありませんが、私は、これからは電気利用データやIoTで「見える化」される個人的なデータが大きな価値を持つようになる時代には、情報をできるだけオープンにするほうがよいと思っています。
かつては個人的な情報を含め、情報は開示しないでクローズドにしておくことのほうが良いという考え方が主流であったと思いますが、インターネット社会では、逆に情報をオープンにすることで、人やお金が集まってくる、様々な可能性が広がる時代になりました。今は、マインドセット(思考様式)としてクローズドよりオープン思考の人のほうが得をする時代です。
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執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センター
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