スマホでサンマが焼ける日ーコラムー第15回 「第2のグーグル」が出現する可能性
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2021年05月06日
一般社団法人エネルギー情報センター

IoTと電気利用データのデジタル化によって、検索の時代から予測の時代になります。ここから新しいサービスを提供する、第2のグーグルが出現するかもしれません。例えば買ってからもバージョンアップする家電です。
執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二
富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。
記事出典:書籍『スマホでサンマが焼ける日 電気とエネルギーをシェアする未来の「新発想論」』(2017年)
「検索」の時代から「予測」の時代へ
こうしてIoTと電気利用データのデジタル化によって膨大なデータが集まると、一体どういうことが起きるのでしょうか?私は、その結果大きなパラダイムシフトが起きると予測しています。それは「検索の時代から〝予測〟の時代になる」ということです。これまでは、インターネット、特にグーグルなどの検索エンジンを使って、今自分が知りたい情報や知識を調べる、手に入れたいモノを探して買う、という「検索」の時代でした。自分が欲するものを事前に認識した上で、それをダイレクトに最短距離、最短時間で探しにいくのです。
しかしIoT、フォグコンピューティングの時代に入るこれからは、欲しいものが事前に分かっていて探しに行くだけでなく、コンピュータまたはAI(人工知能)が「その人が、おそらく本当に欲しいであろうモノを〝予測〟して教えてくれる」時代になっていきます。
たとえば、あなたが普段好きで聴いている音楽、映画、読んでいる本の視聴・購買データ、買っている商品の購買履歴、電気利用から見えてくる家族とのコミュニケーション時間、健康状態、などなど様々なデータをもとに「あなたは自分では気づいていないかもしれませんが、実は今こんな気分で、したがってこんなことがしたいのでは?」と、レコメンドやアドバイスをしてくれるといったものです。今でもネットのアクセス履歴をもとにおすすめ情報・広告を出す機能がありますが、それは単にアクセスログを反映させた単純な自動システムに過ぎません。そういう既存のレコメンドではなく、もっと膨大で細かいデータから綿密な分析を行い、今まで自分が気づかなかったような自分、気づかなかったことを気づかせてくれる時代になるのでは、ということです。これは「顕在ニーズの時代から、潜在ニーズの時代へ」と言ってもいいでしょう。
そうした時代の流れの中で、私は、今のグーグルに変わる新しいサービスを提供する会社、「第2のグーグル」が出現すると予想しています。グーグルは、何か新しい情報を生み出しているわけでもクリエイトしているわけでもなく、世の中にある、インターネット上に存在する情報を集めて整理することで成り立ってきた、いわゆるプラットフォームビジネスです。
同じようにこれからのエネルギー情報資産というものも、そこから何か新しいものが生まれるわけではなく、今までは見えなかった個々の人だったり建物だったり、地域だったりが使ったエネルギー情報のデータが見えるようになるだけです。ここから、その情報をうまく整理して他の人たちが使えるようにすることができた会社が第2のグーグルになるのではないかと思っています。
アメリカではすでにそういった会社が出てきていますが、こうした第2のグーグルは、将来たとえば、今まで使っていた炊飯器が古くなって買い換えたいと思ったら、それまでに蓄積されたデジタルデータがネットショップのアマゾンに自動的に送られて、アマゾンが次に買ったらいい炊飯器をレコメンドしてくれる、といったサービスを提供してくれるかもしれません。また、「前回はこんな大型の高い冷蔵庫を買いましたが、正直おたくの家だとこんなに大きな冷蔵庫は要りません」とか、空気清浄機であれば「あなたの家の空気はきれいだから、こんなに高性能な機械は要りませんよ」などとサジェストしてくれるでしょう。そうなれば家電だけでなく、いろいろなものの無駄な買い物がなくなります。こうしていろいろ検索して自分に合った家電を探して比較検討しなくても、自動的に自分に合ったものが分かる時代になるのです。
電力のデジタル化とIoTによるデータ集積と分析・活用が進めば、これから10年、20年先には「検索から予測の時代」、顕在ニーズだけでなく潜在ニーズにも応えてくれる時代、〝自分の知らなかった自分〟に出会える時代が訪れるはずです。
家電も「買ってからバージョンアップする」時代に
第2のグーグル的技術によって、家電や身の回りの様々な製品の使い方、使われ方は大きく変わっていくでしょう。たとえば今、家電はパソコンと違って買った後にバージョンアップしたりカスタマイズできないので、買うときはどの製品にしようか慎重に検討して買います。買ったあとは、できるだけ搭載された機能を有効に使うだけです。しかしこれからはすべての家電がスマートメーターやインターネットと繋がるようになるでしょう。ということは、パソコンソフトやスマートフォンのアプリ同様にバージョンアップが可能になるということです。
たとえば炊飯器。これからは炊飯器もインターネットと連動していくので、その炊飯器の使われ方=利用データがその炊飯器のメーカーに送信されます。するとメーカー側では「あ、この人は普通にご飯を炊かないで、おかゆばかり作っているな」ということが分かる。するとメーカーはインターネット経由でその炊飯器の中にあるソフトウェアのバージョンアップをしてくれて、おかゆばかり作っているユーザーにより使いやすい炊飯器にしてくれる。こうしてその家電がその人にとって使いやすくなっていくのです。
ワイヤレス給電が普及すれば、もっと多くのデータがスムーズに集積されていくので、家電だけでなく、様々なモノが自分好みにカスタマイズされていくようになるでしょう。電気自動車では買った後に少しずつバージョンアップしていく、という技術が取り入れられ始めています。
海外ではすでに自動制御の家電ができています。たとえば、エアコンのタイマー機能は、エアコンの使用者が「明日の〇時から〇時まで電源を切ってください」とセットすることで機能しますが、自動制御の場合は、クーラーの購入時に「こういうときは自動的にクーラーを止めてもいいですよ」という契約をしてしまう。買ったあとは、メーカー側が勝手に契約通りの運転設定をしてくれる、というものです。
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執筆者情報

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