使っても性能が劣化しない蓄電池、充電により自己修復、東大の研究グループが発見

2019年05月20日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

使っても性能が劣化しない蓄電池、充電により自己修復、東大の研究グループが発見の写真

東京大学大学院工学系研究科の山田淳夫教授、大久保將史准教授、西村真一主任研究員らの研究グループは、電力を蓄えることにより構造を修復する「自己修復能力」を持つ電極材料を発見したと発表しました。

充電により構造の乱れが自己修復していく蓄電池

資源に乏しい日本が持続的に発展するには、革新的なエネルギー技術の開発、導入・普及によって、各国に先んじて次世代型のエネルギー利用社会の構築を実現することが重要です。

その点、日本が提唱する未来社会のコンセプト「Society5.0」では、風力・太陽光といった再エネの電力系統への連携化や、ハイブリッドカーや電気自動車といった高効率自動車の普及が求められています。

しかし、現在使用されている電池は充電できる電力量が限られており、また、充電と放電を繰り返すことで性能が低下するため、普及の妨げとなっています。そのため、より多くの電力を何度でも蓄えることができるように改良することが望まれています。

通常、二次電池の電力貯蔵は、電極材料からイオンが脱離することで行われます。従って、多くのイオンが電極材料から脱離すると、多くの電力を貯蔵することができます。

しかし、一般に利用される電極材料は、多くのイオンが脱離すると不安定化して構造が変化し、性能が大幅に低下することが知られています。この性能劣化は、電池の寿命を短くする原因となるため、二次電池の電力貯蔵能を制限する要因でした。

こうした中、東京大学大学院工学系研究科の山田淳夫教授、大久保將史准教授、西村真一主任研究員らの研究グループは、電力を蓄えることにより構造を修復する「自己修復能力」を持つ電極材料を発見したと発表しました。

従来の電極材料は、多くの電力を蓄えると不安定化して構造が変化し、顕著に性能劣化することが知られています。しかし、研究グループが発見した電極材料は充電により安定な構造に変化するため、充電を行うごとに自己修復を繰り返し、性能が落ちない特徴を持ちます。

研究グループは、電極材料 Na2MO3を充電(ナトリウムイオンの脱離)すると、積層欠陥と呼ばれる構造の乱れが徐々に消失し、完全に充電すると全く構造の乱れが無い状態まで自己修復されることを見出したとしています(図1)。

従来型とた自己修復材料の比較

図1 従来型とた自己修復材料の比較 出典:東京大学

蓄電池の長寿命化が可能に

従来の電極材料であるLiMO2、Li1+xM1-xO2や NaMO2(M=Co,Ni,Mnなど)では、多くのイオンが脱離すると構造が乱れて性能が大幅に劣化することが知られています。

しかし、研究グループが発見した電極材料は、これまでの常識と全く異なるものとなります。具体的には、今回発見された電極材料「Na2RuO3」は、充電する前の状態でX線回折を測定することにより、ブロードな回折線を示し、積層構造に大きな乱れ(積層欠陥)が存在することが示されています。

しかし、今回の電極材料では、ナトリウムイオンを脱離して充電すると回折線は徐々に鋭くなり、積層の乱れが自発的に消失していきました(図2)。また、この自発的な自己修復は、充電と放電を繰り返した後でも生じることが実験により示されています。

充電に伴うX 線回折線の先鋭化

図2 充電に伴うX 線回折線の先鋭化 出典:東京大学

つまり、「Na2RuO3」では、充電するごとに自己修復が行われるため、電極材料に大きな負荷のかかる長期間での充電と放電を繰り返しても殆ど性能の劣化が起こらないこととなります。

研究グループは、充電過程における構造変化を放射光X線回折で更に詳細に調べたところ、自己修復現象にはナトリウムイオンが脱離した後に生じる空孔と、構造中に残存するナトリウムイオンとの間で強いクーロン引力が生まれることが重要な役割を果たしているとしています。これは、イオンと空孔が強く引き合うことで乱れの無い構造へと自発的に変化し、自己修復されていることを示します。

この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。

無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
電力の補助金

補助金情報

再エネや省エネ、蓄電池に関する補助金情報を一覧できます

電力料金プラン

料金プラン(Excel含)

全国各地の料金プラン情報をExcelにてダウンロードできます

電力入札

入札情報

官公庁などが調達・売却する電力の入札情報を一覧できます

電力コラム

電力コラム

電力に関するコラムをすべて閲覧することができます

電力プレスリリース

プレスリリース掲載

電力・エネルギーに関するプレスリリースを掲載できます

電力資格

資格取得の支援

電験3種などの資格取得に関する経済支援制度を設けています

はてなブックマークGoogle+でシェア

執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センターの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0859
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

フィルム型次世代太陽電池の発電効率が、既存太陽電池と同等の15%を実現!実用化に向けた動向とエネルギーハーベスティングの可能性の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2022年02月02日

新電力ネット運営事務局

フィルム型次世代太陽電池の発電効率が、既存太陽電池と同等の15%を実現!実用化に向けた動向とエネルギーハーベスティングの可能性

昨年末、NEDOが次世代型太陽電池の実用化に向けて6件のプロジェクトを採択したことを発表しました。そこで今回は、次世代型太陽電池の最新事例と、その技術を応用した環境発電(エネルギーハーベスティング)の可能性について考えていきます。

ビジネス分野への活用が目の前に迫る量子技術。エネルギー業界への影響とは?の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2021年11月30日

新電力ネット運営事務局

ビジネス分野への活用が目の前に迫る量子技術。エネルギー業界への影響とは?

2021年に入り、IBM、Google、アマゾンなどによる量子コンピューターの商用化の動きが加速してきました。そこで今回は、量子技術とは何か、ビジネス活用事例、そしてエネルギー業界への影響について考えます。

Amazonが国内最大規模の再生可能エネルギー電力調達契約を締結。コーポレートPPAが国内でも活発に。の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2021年09月17日

新電力ネット運営事務局

Amazonが国内最大規模の再生可能エネルギー電力調達契約を締結。コーポレートPPAが国内でも活発に。

企業が発電事業者との長期契約に基づき、再エネ由来の電力を直接調達する「コーポレートPPA」が世界で広がっています。これまで、アメリカの大手IT企業中心に導入が進み、再生エネ普及を後押ししてきました。2021年9月8日、その代表格であるAmazon社が日本で大規模な太陽光発電の直接契約を行いました。今回は、コーポレートPPAに注目して、世界そして国内の動向をまとめていきます。

家庭向け蓄電池市場の広がり、海外勢やサブスク型とメーカー・販売方法も多様にvol.2の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2021年09月06日

新電力ネット運営事務局

家庭向け蓄電池市場の広がり、海外勢やサブスク型とメーカー・販売方法も多様にvol.2

2009年からはじまった余剰電力買取制度が10年を迎え、2019年には53万件、2023年までに計165万件が制度対象外になると資源エネルギー庁が公表しています。前回は、国内の蓄電池市場の状況を整理しました。今回は、家庭用蓄電池の今後について、価格、販売モデル、システムといった3つの観点から諸外国の事例や企業のサービス事例を参考にしながら考えていきます。

スマホでサンマが焼ける日ーコラムー第19回 電力・エネルギーから考える「これからの世界」の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2021年09月06日

新電力ネット運営事務局

スマホでサンマが焼ける日ーコラムー第19回 電力・エネルギーから考える「これからの世界」

エネルギーコストゼロの世界の実現で本当にやりたい仕事、自分の資質を活かす仕事に挑戦できたり、エネルギーシェアで、新しい価値に対して人々がお金を払う時代になったりと、豊かな世界に向かっていると信じています。