補助部材使わず中高温域での熱電変換を実現、ろうそくのような小さな炎で電気生成に成功

2017年11月21日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

補助部材使わず中高温域での熱電変換を実現、ろうそくのような小さな炎で電気生成に成功の写真

11月17日、NEDO、TherMAT、古河電気工業は、世界で初めて、中高温域での熱電変換を実現するクラスレート焼結体U字素子を開発したと発表しました。工業炉や自動車エンジンの排熱など、200~800℃の中高温域での未利用熱エネルギーを電力に変換する高出力熱電発電モジュールの実現が期待されます。

世界初、中高温域での熱電変換を実現するクラスレート焼結体U字素子を開発

日本では、一次エネルギー供給量の約3分の2が有効活用できず、熱として失われています。一次エネルギー総供給に対する部門別の損失量の比率は、発電は27.1%、産業は 13.1%、運輸は 12.7%、民生は 6.9%となっており、例えば発電部門においては、火力発電における損失量が多いです(図1)。

また、「省エネルギー技術戦略2016」において、年間1兆kWhにものぼる未利用熱エネルギーの大部分が排熱として廃棄されている現状にあることが指摘されており、その有効利用が強く求められています。平成26年4月に閣議決定された「エネルギー基本計画」においても、冒頭に省エネの重要性が提示されており、特に産業部門においては技術開発の推進を強調しています。

海外においては、米国(DOE)、欧州(FP7)、中国、韓国等では大規模なプロジェクト研究がスタートしており、産学官が一体となった熱マネジメント実用研究を展開しています。例えば、米国エネルギー省では、2015年2月公開の資料の素案の中で、産業・製造業強化の鍵となる技術候補14中の2つに、排熱利用技術全般と熱電発電を取り上げています。特に熱電発電は、従来自動車向けを中心に行ってきた研究開発とともに、製造プロセスでの排熱回収向けも視野に入れるべきだと提言しています。

(左)日本における一次エネルギー供給から最終消費に至るエネルギーフロー、(右)日本における一次エネルギー総供給に対する部門別の損失量の比率

図1 (左)日本における一次エネルギー供給から最終消費に至るエネルギーフロー、(右)日本における一次エネルギー総供給に対する部門別の損失量の比率 出典:NEDO

日本においてはNEDOが、利用されることなく環境中に排出されている膨大な量の未利用熱に着目し、「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」を2015年度から実施しています。そして今回、NEDO、TherMAT、古河電気工業は、世界で初めて、中高温域での熱電変換を実現するクラスレート焼結体U字素子を開発したと発表しました(図2)。工業炉や自動車エンジンの排熱など、200~800℃の中高温域での未利用熱エネルギーを電力に変換する高出力熱電発電モジュールの実現が期待されます。

クラスレート焼結体U字素子と従来のデバイス構成との比較

図2 クラスレート焼結体U字素子と従来のデバイス構成との比較 出典:NEDO

特別な集熱や放熱、大気暴露防止のための補助部材がない状態でも発電可能

熱電変換技術は、固体のゼーベック効果(固体に温度差を与えると電圧が発生する現象)を利用して排熱から直接電力を得ることが可能な技術です。工場排熱や自動車エンジンなど、中高温域といわれる200~800℃の未利用熱を有効に利用して省エネルギーに資することが期待されます。

しかし、中高温域で熱電性能の高い材料は、鉛、テルル、アンチモン、セレン、タリウムなど、毒性が高く希少で低融点の元素から構成されるものがほとんどです。これらの元素から構成される熱電変換材料は、空気中での使用には工夫が必要なことなどから、広く利用されるには至っていません。

今回開発された「環境調和型のシリコンクラスレート化合物からなるP型およびN型焼結体が一体となった高温電極レスのU字素子」は、地球上に最も豊富に存在するシリコンを主原料としています。P型、N型ともに同系のシリコンクラスレート化合物で構成しているため、線膨張係数などの物性値に大きな差異がありません。

また、従来のモジュールにある高温側の金属電極と絶縁性基板を無くしたことにより、高温耐性が得られています。この素子をろうそくなどの炎にかざすと50mVの電圧が得られます。なお、この素子を8個用いて、低温側に金属電極を配し、電気的に直列に、熱的に並列に配置した、8対ハーフスケルトンモジュールが開発されています。

今回、このモジュールをろうそくの炎(外炎、約800℃)にかざす実験が行われ、小型のモーターを回転させることに成功しました(図3)。これによって、特別な集熱や放熱、大気暴露防止のための補助部材がない状態でも発電できることが分かりました。

小さな炎で電気を起こしている様子

図3 小さな炎で電気を起こしている様子 出典:NEDO

高音域に対応、直火であぶることが可能

今回開発されたU字素子は、直火であぶれるほどの高温域に特化しています(図4)。接続する素子の数を増やすことで、マイクロワット(μW)からキロワット(kW)レベルの発電量を得ることが期待されます。

利用温度域イメージ

図4 利用温度域イメージ 出典:NEDO

今後の展望、「コンロに設置する小型発電システム」などの実現可能性に向けた検討

今回の技術は、自動車排熱や産業排熱分野だけでなく他分野へも応用可能です。今後は、さらなる省エネに向けた展開が検討され、例えば「コンロに設置する小型発電システム」といった案があります(図5)。

防災備蓄品として推奨されているカセットコンロと組み合わせることで、スマートフォンなどの小型電子機器への充電ができるような、備えとしての活用も期待されます。さらに、工業炉や自動車エンジンの排熱など、200~800℃の中高温域で未利用熱エネルギーを電力に変換する高出力熱電発電モジュールの実現に向け検討が進められます。また、材料開発においては、ナノ組織化による電気抵抗率の上昇を抑える技術の確立に向け検討が進められます。

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