エジソンが電球発明に利用した「竹」がバイオ燃料にも使える、日立が新技術を開発
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2017年03月10日
一般社団法人エネルギー情報センター

3月9日、日立製作所はこれまでバイオマス燃料に適さないとされてきた「竹」を発電に利用できる新技術を開発しました。その過程で抽出される成分は植物育成剤としても利用可能であり、持続可能なバイオマス再生循環システムの確立につながることが期待されます。
これまで難しかった「竹」のバイオマス利用が可能になる可能性
これまで、竹という素材は発電用バイオマス燃料には不向きとされてきました。しかし日立製作所は、竹類からカリウムと塩素を溶出させることで、発電用木質バイオマス燃料と同等の品質に改質する技術を開発しました。この技術は、林野庁の補助事業である「木質バイオマス加工・利用システム開発事業」として、福岡県八女市と北九州市の協力のもと、2年間にわたり開発が進められたものです。
竹が発電用バイオマス燃料に適さない理由は、主に4つあります。その理由は、①カリウムが多量に含有されているため灰の軟化温度が680~900℃と低いこと、②大型のボイラで燃焼させると炉内にクリンカという溶岩を生成すること、③塩素濃度が高いことから耐火物や伝熱管の腐食を発生させやすいこと、④低温で燃焼した場合、ダイオキシン類を生成し、さらに燃焼温度に関わらず200~500℃でダイオキシンが再合成することです。このような特性はカリウムと塩素が密接に関わるので、それらを取り除き発電用木質バイオマス燃料並みに改質する技術開発が進められてきました。
日立がカリウムと塩素を溶出させる過程では、成長の早い植物の断面が多孔質の繊維で構成されていることに着目したそうです。微粒化し水に浸せば、水溶性物質であるカリウムと塩素類を容易に溶出できるという知見が得られたとしています。この知見に基づき、竹を専用の粉砕機で粒径6ミリ以下まで微粒化し、それを水に浸すことで、カリウムと塩素を溶出させます。そして脱水することにより、カリウム濃度と塩素濃度を低下させることができました。
今回の技術は様々な種類の竹類で利用でき、例えば孟宗竹では灰の軟化温度を800℃から1400℃に向上させ、塩素濃度も0.17wt%から0.01wt%まで抑えられます。一方で今回の実験期間では、木質ペレット(品質区分B)において概ね灰の軟化温度が約1100℃、塩素濃度も0.03wt%程度のようです(図1)。そのため、新技術を適用した竹類は木質バイオマスペレット燃料規格レベルに達しているといえます。

図1 竹類の改善結果一例 出典:日立製作所
竹類だけではなく、笹や雑草類、未利用の杉の皮でも今回の技術は活用できます。例えば、雑草では灰の軟化温度を1030℃から1160℃に向上させ、塩素濃度も0.31%から0.04%まで抑えられています(図2)。

図2 竹以外の未利用バイオマス改善結果 出典:日立製作所
抽出した成分は植物育成剤として使える
今回の技術により抽出された成分において、50項目の有害物質分析で有害物質は検出されませんでした。また、カリウムだけでなく、肥料の三要素と言われる残りの窒素とリン酸も微量ながら有していることが確認されています。そのため、抽出物を高濃度にしたものが植物育成剤として利用が可能であるかを、小松菜の栽培で試験が行われました。
その結果、添加の小松菜に比べて丈が1~2センチ程度高く成長し、さらに重量が無添加の小松菜を100とした場合、124~144の生態重量になりました。さらに収穫時には、無添加の小松菜に比べ変色が少ない結果となりました(図3)。これらから、植物育成剤として利用できる可能性があると考えられます。

図3 生育状態の写真(12月2日撮影) 出典:日立製作所
林業に関する新しい発見も
今回の技術開発における過程では林業に関する新しい発見もあり、その一つが機械の刃が短時間で磨耗することへの対処です。これまで竹は、表面にあるケイ素成分によって機械の刃を短時間で磨耗させると考えられてきました。しかし日立は、竹のケイ素濃度は高くないことから別の要因があると推測しました。
結果、弾性体の竹外面で竹蝋により刃が横滑りをすることで刃先が欠損していたことと、竹に付着した泥や小石、砂類によって摩擦が発生しているといったことが判明しました。そこで、破砕機で竹を破砕する際は、事前に竹表面と端部の泥類を取り除くとともに、竹を割って竹の内側面より刃があたるように前処理をすることで、破砕機の刃の摩擦延命化が可能という知見が得られたとしています。
もう一つが、竹収集における原料コストの引き下げです。一般的な竹収集では竹を定尺に玉切りし、枝払いして収集していますが、大半の作業が人手によるもので、原料コストを引き上げています。日立では、重機による竹の伐採および伐採直後に竹専用細断機で細断し、気流搬送によりバキュームカーで収集することが可能であると確認しました。これにより、従来の伐採収集に比べ輸送効率が3~4倍に向上することから、3分の1~5分の1程度、費用低減が可能であると推定されており、結果として原料コスト削減に寄与します(図4)。

図4 伐採から収集のイメージ 出典:日立製作所
エジソンが電球を発明した時のカギは「竹」、日本の竹がきっかけに世界に明かりが広がる
今回、日立が開発した技術のキーとなる「竹」ですが、この素材を電力機器で利用するという点では、エジソンの白熱電球が有名ではないでしょうか。そのエピソードにおいて登場する「日本の竹」ですが、なぜエジソンは電球の材料として竹を選び、日本の竹に行き着いたのでしょうか。
まず、白熱電球の概要について見ていきます。白熱電球は真空にしたガラス球内に、封入したフィラメントと呼ばれる炭素の芯に通電することで発光させる仕組みになっています。実は白熱電球を始めて作ったのはエジソンではなく、英国のデ・ラ・ルーエが1820年に作成したものだと言われています。その後の1878年、実用的なカーボン電球がイギリスのジョセフ・スワンにより作られましたが、点灯時間は40秒程度であり、事実上は成功したと言い難いものでした。その一年後である1879年、エジソンが開発した白熱電球は、フィラメント素材として木綿糸にタールを塗ったものであり、点灯時間は45時間程度でした。そのため、実用白熱電球の発明者はエジソンとされることとなったのです。
ただ、45時間でもまだまだ短い時間なので、白熱電球の開発とは、長時間にわたって発光し続けられるフィラメントの材料探しでした。そこである日エジソンは、竹をフィラメントに使って実験したところ、連続点灯時間が200時間を越えました。数多くの失敗から成功を導いたことで有名なエジソンですが、ここに至り白熱電球を長時間持続させる足掛かりを得ました。このことがきっかけとなり、エジソンは世界中の竹を集めることとなりました。
エジソンは、竹を世界中から集めるために10万ドルの費用を費やし、20人の調査員を世界中に派遣したといわれています。竹は世界中に1200種類ほど存在していますが、調査員の一人が、「竹ならば京都が一番である」という情報を得ます。そして、京都の石清水八幡宮周辺の竹をフィラメントとして炭化させ実験したところ、1200時間の点灯に成功しました。その後改良を重ね、点灯時間は2000時間まで伸びました。
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