大気中の粒子で太陽光を直接遮断する温暖化対策、UCバークレーが農作物への影響を発表
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2018年10月24日
一般社団法人エネルギー情報センター

カリフォルニア大学バークレー校の研究チームでは、硫酸塩エアロゾルを大気中に散布する温暖化対策において、全球の作物収量に与える影響を調べています。最近の報告によると、エアロゾル粒子による地球温暖化対策を行った場合、作物収穫量は増加も低下もしないとしています。
大気中の粒子で太陽光を直接反射する温暖化対策
人口増加、経済成長などによって急速に進むと想定される地球温暖化は、世界全体で取り組むべき大きな課題として、近年様々な取り組みが検証されています。
大気気温を引き下げる要因は様々ありますが、その中の一つにエアロゾル粒子があります。エアロゾル粒子とは、空気中に浮遊する様々な固体や液体の粒子のことです。例えば、火山噴火などで成層圏に巻き上げられたエアロゾル粒子は、太陽光の一部を宇宙に反射することで、寒冷化をもたらします。
こうした事例に着想を得て、硫酸塩エアロゾルの前駆物質を成層圏に投入して温暖化の影響を緩和しようという気候工学的提案がなされています。こうしたアプローチは、意図的かつ大々的に気候に影響を与える「ジオエンジニアリング」の一環となります。
カリフォルニア大学バークレー校の研究チームは、硫酸塩エアロゾルを大気中に散布する温暖化対策において、全球の作物収量に与える影響を調べています。これまでの研究では、エアロゾル粒子は温暖化対策となるだけではなく、散乱光によるエネルギー効率化や、気温低下による熱ストレスの減少で作物の収穫量は増加すると考えられてきました。
しかし、研究チームによる最近の報告によると、エアロゾル粒子による地球温暖化対策を行った場合、作物収穫量は増加も低下もしないとしています。
本来、地球温暖化が抑えられると、農業生産や食料安全保障に対する脅威は減少します。しかし、エアロゾル粒子を活用した温暖化対策では、気温低下により植物の熱ストレスが下がる利点はあるものの、日射量の低下が収穫量に悪影響を与え、総合的には足し引き0になるとの試算になりました。
噴火データと衛星データから農作物への影響を算出
研究チームは、ピナツボ山の噴火とメキシコのエルチチョン噴火(1982年)を自然実験として用いて、エアロゾルが全球の作物収量に与える影響を調べました。例えば、ピナツボ噴火の場合、大気中に約2000万トンの二酸化硫黄が混入したことで、太陽光を約2.5%減少させ、平均気温が約1度低下しました(図1)。

図1 ピナツボ山の噴火を現したイラスト、青色は反射性エアロゾル、緑色は作物 出典:University of California Berkeley
研究チームは、1979年から2009年の間に衛星が観測した、105カ国のトウモロコシ、大豆、米、小麦の生産を調査し、農業への影響を研究しました。ここから得た結果を地球規模の気候モデルと組み合わせることで、硫酸塩エアロゾル粒子による温暖化対策では、農作物の収穫量は回復しないという結論に至ったとしています。これは、植物の熱ストレス減少から得られる作物生産の利益は、遮光による損害によって相殺されるためです(図2)。
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