大気汚染の影響による死亡数が世界2位のインド、2030年までに電気自動車のみ販売へ

2017年06月05日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

大気汚染の影響による死亡数が世界2位のインド、2030年までに電気自動車のみ販売への写真

インド政府は、国内で販売する自動車について2030年までに全て電気自動車とする政策方針を発表しました。インドでは年間100万人以上がPM2.5の影響で死亡しているという報告もあり、電気自動車への変換によって大気汚染が改善することが期待されます。

インド政府、2030年以降は電気自動車のみの販売に限定

大気を汚染し、人体に健康被害を及ぼすおそれのある代表的な汚染物質には、二酸化窒素や浮遊粒子状物質、微小粒子状物質(PM2.5)、光化学オキシダント、二酸化硫黄、一酸化炭素などがあげられます。日本において、これらの物質には、行政上の目標として環境基準が定められています(図1)。

日本における大気汚染に係る環境基準

図1 日本における大気汚染に係る環境基準 出典:東京都

大気汚染による政策や被害度合いは世界の各国で状況が異なっており、その中でもインドは特に健康影響の大きい国の1つです。「Global Burden of Disease 2015 report」によると、PM2.5の影響で世界では400万人以上が死亡し、その半数以上が中国とインドに集中していると推定されています(図1)。

こうした中インド政府は、国内で販売する自動車について2030年までに全て電気自動車とする政策を発表しました。インドのPiyush Goyalエネルギー相によると、最初の2〜3年間は政府が財政的に支援するとしています。その後については、電気自動車の生産は市場に支えられ、補助金に頼らない形が取られる方針です。

STATE OF GLOBAL AIR/2017によると、PM2.5による死亡者数はインドが世界二位であり、年間で100万人以上の規模となります。加えて世界銀行によると、GDPの3%の損失に繋がっていると推計されてます。今回の電気自動車への転換は、こうした状況を改善させる効果が期待できます。

PM2.5による年間死亡者数

図1 PM2.5による年間死亡者数 出典:Health Effects Institute

インドの人口は増加傾向のため、仮に同じ大気汚染の濃度であったとしても、影響を受ける人数の規模は大きくなっていきます。そのため、単純な死亡数の増加だけでは、それが大気汚染悪化の影響と判断することはできません。しかしインドの場合、一人当たりのPM2.5にさらされる量を見ても、2011年の64μg/m3から2015年には74μg/m3と悪化してきています(図2)。

PM2.5の一日当たりにさらされる量

図2 インドにおいて一日当たりにさらされるPM2.5の量 出典:State of Global Air

2016年にWHOが公表した資料によると、世界においてPM2.5の濃度が高い上位20都市の内、インドが10都市を占めていました。PM2.5の濃度が最も高い都市は、インドの中ではGwaliorとなり、176μg/m3にも達します(表1)。インド内での基準は40μg/m3以下であり、WHOの基準においては10μg/m3以下であるため、大幅に超過している状態といえます。

都市 ug/m3
1 Iran (Islamic Republic of) Zabol 217
2 India Gwalior 176
3 India Allahabad 170
4 Saudi Arabia Riyadh 156
5 Saudi Arabia Al Jubail 152
6 India Patna 149
7 India Raipur 144
8 Cameroon Bamenda 132
9 China Xingtai 128
10 China Baoding 126
11 India Delhi 122
12 India Ludhiana 122
13 Saudi Arabia Dammam 121
14 China Shijiazhuang 121
15 India Kanpur 115
16 India Khanna 114
17 India Firozabad 113
18 India Lucknow 113
19 China Handan 112
20 Pakistan Peshawar 111

表1 PM2.5の濃度が高い上位20都市 出典:WHO資料より作成

世界で進められる環境政策

今回の電気自動車への転換は、インド政府が進める環境対策の一部です。例えば、太陽光発電に関して、インド政府は2022年までに100ギガワットを目指すとしており、2016年の10ギガワットから10倍に伸ばす目標を掲げています。

また、トランプ大統領がパリ協定を離脱表明した後、Narendra Modiインド首相はパリ協定へのコミットメントを強化しています。インドは世界で3番目に大きな石油の輸入国となっておりますが、石油から離脱する方針で動いているので、長期的には石油需要が減少していく可能性があります。

今回の電気自動車への転換に関して、世界経済フォーラムによると、2030年までにインド内で600億ドルのエネルギーコストが節約され、何百万人もの自動車所有者のランニングコストが削減されるとしています。インドだけではなく、中国が4月に発表したロードマップにおいても、2025年に予想される年間3500万台の自動車販売の内、少なくとも5分の1を代替燃料車が占めることを目標としています。

こうした様々な動きがあり、電気自動車の台数に関して、BPは2015年の120万台から2035年には約1億台に増加し、世界の6%に達すると予測しています。これらの電気自動車の約4分の1は、電力と石油の混合で作動するプラグインハイブリッドであり、4分の3は純粋なバッテリー電気自動車としています。電気自動車のシェアが伸びることで大気汚染が改善され、ビジネスとしての市場も活性化していくことが期待されます。

はてなブックマークGoogle+でシェア

執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センターの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0859
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

活性化する商用車の電動化!物流を変える商用EV市場の最新動向。の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2021年11月05日

新電力ネット運営事務局

活性化する商用車の電動化!物流を変える商用EV市場の最新動向。

欧州連合(EU)が2035年にガソリン車の販売を事実上禁止する方針を打ち出すなど、世界各国によるEVシフトの動きは加速の一途をたどっています。欧米メーカーだけでなく、中国勢もコスト力で存在感を見せています。ASEANやインドなどの新興国市場でもEVで先手を取ろうと各国のメーカーが積極的な動きを示しています。今回は、国内市場で動きが活発化している商用車の電動(EV・FCV)化について最新動向をみていきます。

日本の脱炭素社会実現へ、異業種のEV参入相次ぐの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2021年03月15日

新電力ネット運営事務局

日本の脱炭素社会実現へ、異業種のEV参入相次ぐ

循環型社会、脱炭素社会を目指す時代の流れとともに、近年、ガソリン車に比べて、参入障壁が低いことから、世界の名だたるIT・ハイテク企業がEVシフトを本格化させようとしています。こうした企業はEVと親和性の高い自動運転の分野で自社の技術を活かすことができます。“新しいモビリティ”としてスマホからEVへのシフトチェンジが起きており、EV市場の覇権争いが激化しています。今回は、世界の動向から日本の異業種参入の事例、そして日本のEV化の課題について考えていきたいと思います。

HEMSの未来を創るテスラ社がエアコン事業へ参入の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2021年01月31日

新電力ネット運営事務局

HEMSの未来を創るテスラ社がエアコン事業へ参入

2020年9⽉22⽇、米テスラ社が開いた株主総会に伴うイベントで、CEOであるイーロン・マスク氏は、「家庭⽤エアコン事業を来年始めるかもしれない。「より静かで効率が⾼く、省エネ性に優れたエアコンを作れると思う」と発言したことが注目されました。HEMSの未来を創るテスラ社がエアコン事業へ参入した背景について考えます。

アップル社、2024年に電気自動車(EV)の生産開始を目指すの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2021年01月13日

新電力ネット運営事務局

アップル社、2024年に電気自動車(EV)の生産開始を目指す

2020年12月、ロイター通信は米アップルが2024年の電気自動車(EV)の生産開始を目指し、車載電池技術の開発を進めていると報じました。実現すれば、既存の自動車大手にとっては脅威的な存在となるかもしれません。

電気自動車による気候変動対策、世界の約95%のエリアで効果的、ケンブリッジ大学など発表の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2020年04月07日

新電力ネット運営事務局

電気自動車による気候変動対策、世界の約95%のエリアで効果的、ケンブリッジ大学など発表

エクセター、ナイメーヘン、ケンブリッジ大学は3月、電気自動車への移行により世界の95%のエリアで脱炭素化が実現するとの最新の研究結果を発表しました。研究では発電方法の違いを考慮して、世界を59の地域に分割した上で詳細なシミュレーションが行われました。